成人の日の行動記録

朝9時を回るか回らないかという頃にノアノアにて目覚める。


小さな東側の窓から日差しが寝起きの目に入ってきて、
僕をいち早く完全なる覚醒へいざなうべく目覚まし時計の2回目のリンリンと
同じ役目をかってくれていた。


それとともにもはや10年近く前となってしまった成人式の日に
昨日の猛吹雪とは打って変わってかすかであっても
日差しが色鮮やかな振り袖に降り注ぎ、
彼女らを祝福できたことを
すこしばかり喜ばしく思った。


NHKで柳美里が誕生してから
今に至る激動の人生のドキュメントを観る。
坂口安吾が『堕落論』のなかで小林秀雄を論じた「教祖の文学」のある一説を思い出した。

文学は生きることだよ。見ることではないのだ。
生きるということは必ずしも行うということで
なくともよいのかも知れぬ。
書斎の中に閉じこもっていてもよい。
然し作家はともかく生きる人間の退ッ引きならぬギリギリの相を見つめ
自分の仮面を一枚ずつはぎとって行く苦痛に身をひそめて
そこから人間の詩を歌いだすのでなければダメだ。
生きる人間を締めだした文学などがあるものではない。

まだそこには文学の力強さがあった。
ただただ楽しくおもしろい、ではなく、怖さや恐ろしさを乗り越えたからこそ
この世に存在できる何かがあった。


11時より近くの公共運動施設「ビジョンよしだ」に行く。
800円を自動販売機にチャリンちゃりんと入れ、
チケットを出しはじめてそのなかに侵入する。
ロッカーを探すべくウロウロし、それを発見すると
またロッカーでも100円硬貨をチャリンと入れて、
荷物を入れて、カギをかける。
いわゆるスポーツクラブのジムのロッカーのような、
縦長で、ハンガーがあって上着も掛けられて・・・
というのを想像していたら、とてもスクエアな
駅のロッカーの払い下げ品みたいなロッカーで困った。
ま、800円だしね。仕方ないやね。
気を取り直して、30分ゆっくりとマシンのうえで懸命に走る、走る。
ミスチルとかコブクロとかスキマスイッチとかのJポップを聞きながら
心地よい疲労感を目指して手を意識的に後ろに引いて、
箱根駅伝を意味なくイメージしながら走る。
すこしストレッチをして早々とジムを後にし、
シャワーをさっと浴びてパンツの上に載った若干の脂肪を凝視して、
こいつとできるだけ早くおさらばするぞ、と心に誓いつつ、
気が滅入るのでズボンをスッと履いた。


更衣室から出ると、全部種類の違うマッサージチェアが3つ
タンタンタンと鎮座していたので、その一つに座り、スイッチを押すも
動き出す気配すらないので、あたりを見渡してみると、100円硬貨を入れてね、
という雰囲気のものを見つけてしまい、せっかく座ったので、
さっきロッカーから戻ってきた100円をチャリンと入れる。
ランプが光り、ぐぅ〜と大男が空腹になったときのような音を出しながら、
古いマッサージチェアが動き出した。
イチローが常に遠征先にも持ち込むという
足裏マッサージ器に足を置いて、色んな角度で足裏をほぐす。
昔はもっとくすぐったかった印象なのだけれど、年のせいか何のせいか案外気持ちいい。
薄汚いマッサージ器なのだけれど、なんか公共的な、みんなの善意でできているんだよ、
という感じが、気持ちよさに対する追い風に思われた。


その後、新潟伊勢丹でやっていたピカソ展を見る。
ピカソの作品はどれもこれもすばらしい(陶器はあまりぴんと来ないのだけれども)。
百貨店の催し物場の一角でやっている、とはいえ、
あまりに空間がよくない。
アート単体の善し悪しをそれのみによって判断できるわけではなくって、
どういう順番で、どういう空間で、どんなストーリーが入り口から出口にかけて作られているのか、
ということでそのアートがどのように見えてくるか、ということが変わってきうると思う。
でもみんなそんなことより、あのピカソなんだってよ、それをこの目で見たんだよ
ということでもう十分なのかもしれないけどね。


ホテル日航新潟で「マニプリ」というリラクゼーションルームができたようなので、
ヘッドスパ(クリームバス)を体験しに行く。
ホテルという一定のブランドを反映させた空間、サービスがいかなるもので、
それに対して美容室のヘッドスパはどうポジショニングすればよいのか、
ということを考察するうえでの訪問であった。
それは今度「ナイトスパ」という週末金曜日の夜に
1週間の疲れを頭から抜き取ったうえで
気持ちよく休日に入っていただくべく、
できるかぎり美容室として癒しに全力投球するとこんなんなりました、
ということをしたいなぁ、と思っている。
(いい意味でスタイルのことは忘れてしまおう)
たとえば、すべて揺らめくキャンドルのなかで、
ケラスターゼのヘアエステ・スカルプエステに
アロマ的要素を付加して、最後はジャンポールエヴァンのチョコレートとコーヒーで
脳にもしっかりと栄養を与えてあげて(本当はシャンパンを飲んでほしいけどね)
そのまま居眠り運転しないように家路についてもらって、ベッドに直行していただく。


そういうことをしたいと思っている。


まだまだ企画段階だから何とも言えないけどね。
興味を持つ人はそこまでいるとも思えないのだけれど、
「あぁ、こういうお店を近くに持ててよかったわ」とひとりからでも言われたいから
みんながそこそこに喜ぶことだけでは終わりたくないし、
多くの人が「別にそんなんいいわ」と言っても一部の人から「すっごい感動したよ」って言われたいから
なんとかそういうことをしたいのと思っている。
一応告知もかねて、構想段階の企画をあえて書きつけておくことにする。


夜ご飯はスタバのグランデコーヒーテイクアウト&マックのチーズバーガー。
もうすっかり脱衣場の鏡のまえでなされたメタボ解消宣言を忘れてしまったらしい。
でもたまに食べたくなる、そういうおいしさは十分に持っていると思うよ。


明日から明日から・・・。
できてないときは、まだ始めてないことにする。
これを知恵というか悪知恵というかはわからないけど、すこし前向きなかんじがするから
許してはもらえないのだろうか。